今年の8月、夏のダンスドリル全国大会を振り返って。
一条高校はダンスドリルという大会を部活動の大きな目標に据えている。この大会に向けて、冬から春そして夏までかけて作品を作り上げて大会に挑む。そして3年生が出場する最後の大会。全国大会に出場し、出場するだけでなく全国優勝することを目標に掲げている。今年は民族というテーマの作品。
実際見る人によって、インドであったりアフリカであったり、つまりどこか知らないけれど、どこかの民族である、という印象を与えていたようである。この作品もダンスドリルでは異色のものであった。一条だけが何か特別なルールで踊っているかのような。実際審査員の評価も分かれた。そして概ね、部門別に細かく分かれたダンスドリルの大会ではどこかのカテゴリーに収まりきらない、という結末だったように感じる。そしてドリルの大会では評価されないのではないか、という心配が生徒の中では広がっていた。確かにある種の傾向を追求し、ある種の審査基準を明確にもつこの大会では最高の評価を得られることはなかった。Best Overall Presentation という特別賞をいただいた。
それでも、この作品は多くの人から賞賛をもって語られた。出会う色んな人から、あの作品大好きです、と。よかったです、と。
強い光と濃い影、豊穣と渇望、覚醒と歓喜、深い森と底なしの沼、客人と秘祭、死と再生、神々と動物。2分半という短い時間に文化人類学的な、贈与経済というシステムで成り立っていた文明化される以前、原初の人類生活を彷彿とさせる、そんな作品である。
そんな作品を俺は見たことがなかった。
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